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  <title>EN倉庫</title>
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  <description>なんかもお、管理が出来なくなったのでブログで倉庫化。</description>
  <lastBuildDate>Sat, 20 Feb 2010 11:17:00 GMT</lastBuildDate>
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    <item>
    <title>保守っ</title>
    <description>
    <![CDATA[なにこのヒワイな広告・・・・・・]]>
    </description>
    <category>傾向と対策</category>
    <link>https://enkura.blog.shinobi.jp/%E5%82%BE%E5%90%91%E3%81%A8%E5%AF%BE%E7%AD%96/%E4%BF%9D%E5%AE%88%E3%81%A3</link>
    <pubDate>Sun, 19 Apr 2009 06:08:28 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>妄想だ！　妄想だと言った！　　（注）ここは日本らしいです）</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
　曇りの無い完璧なダイアモンドのように踊り、そしてほほえむのよ。お姫様だって大人になるのだから、大人のつんとしたところも見せなくちゃ駄目よ。いつまでも少女のままではいませんっていう決意のこもったほほえみよ、ただ笑うのじゃなくてね――お母さんは、間違ったことは言ってない。そう、そのように踊るべきだったし、あたしもそういうように踊りたかった。圧倒的な幸福なんてものがあるとは思えないし、あったところで見せ付けるようなことはしたくない。でもそれを見せ付けるのがダンサーだといわれると言葉に詰まる。それで、それだけでなにが伝わるっていうのよ、と言いたくても言えない。幸福は、間違いなく必要な要素だから。<br />
　そのあたしの、あたしとお母さんのオーロラは、負けた。価値がないと、判断された。あたしが悪い。お母さんは悪くない。あたしが悪い。<br />
<br />
「ミスもなく、怪我もなく済んだもの&hellip;&hellip;誰が見ても一番のオーロラだったわ。きらきらしていて目が痛くなるくらいによ。クロードさまがいらしたら拝み倒しちゃうくらいにきれいだったもの」<br />
<br />
　お母さんは、元ダンサー。今はただのお教室の先生だけれど、本当に凄い人だった。あたしはお母さんのこと、あまり知らなかった。みんながお母さんを褒めるたび、そんなに持ち上げてくれなくってもいいのに、なんて思っていたぐらい。お母さんの記録映像を見たのは数ヶ月前の事。本当に凄いのだと知ったのは、このとき。<br />
　あたしは全力を尽くした。あたしにできる総てを出した心算だった。でも、評価はされなかった。ひとりだけ、賞なしだった。お母さんを、汚してしまった。<br />
<br />
「さあ、リーン。次はどのコンクールにしようかな。あ、その前に、アイスクリーム食べに行こうか。何年ぶりかな。ねえ？」<br />
<br />
　――君はミュージカル・プレイヤーになりたいの？<br />
　アクトレスではなく、プレイヤー、とまで言われた。それが、あたしの評価。欲しかった言葉はなかった。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;そんな顔、しないで。おうちに帰ろ？」<br />
「うん&hellip;&hellip;」<br />
「お稽古場に帰ろ」<br />
「うん」<br />
「いっぱい、踊ろうね」<br />
「うん&hellip;&hellip;うん」<br />
<br />
　泣くものか。絶対に泣くものか。<br />
　悔しさも、惨めさも、なにもかもは、稽古場に持って帰らなくちゃいけない。稽古場以外でこぼす涙に価値はない。<br />
<br />
「ごめんなさい、お母さん」<br />
「どうして謝るのかな」<br />
<br />
　お母さんは、あたしを抱きしめてくれた。本当に、お母さんは凄い人だ。お母さんの名前を汚したっていうのに、お母さんの娘なのにお母さんの十八番が上手にできなかったのに、お母さんの夢をかなえることができなかったのに。<br />
　あたしは――お母さんの最高傑作でありたい。お母さんの自慢でありたい。常に誇れる娘でありたい。ヴィデオを見たとき、心の底から思った。このひとの娘に生まれたことは奇跡以外の言葉では説明できないって。このひとの表現したかったことは、今の自分が表現したいことと完璧に重なることも。<br />
<br />
「行こう。今日はアイスクリームを食べよう」<br />
「&hellip;&hellip;シャーベットにしようよ」<br />
「そうだね。そうしようか」<br />
<br />
　敗者は音も無く去る。誰よりも早く、あたしたちはホテルへ帰った。途中、お母さんは偉そうな人たちにパーティーに誘われていたことが、あたしは申し訳なかった。行っていいんだよ、帰ってストレッチして寝るだけだもんと言うと、お母さんはシャーベットが食べたいんです、と言ってタクシーを捕まえた。<br />
<br />
「目ン玉節穴の奴らと一緒に食べる筋合いないもんね」<br />
<br />
　お母さんは、怒っていた。<br />
　それが、死ぬほど惨めな自分を慰めた。&hellip;&hellip;あたしはつくづく、駄目な娘だと思う。<br />
<br />
<br />
<br /><br /><a href="https://enkura.blog.shinobi.jp/%E3%83%8D%E3%82%BF/%E5%A6%84%E6%83%B3%E3%81%A0%EF%BC%81%E3%80%80%E5%A6%84%E6%83%B3%E3%81%A0%E3%81%A8%E8%A8%80%E3%81%A3%E3%81%9F%EF%BC%81%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E6%B3%A8%EF%BC%89%E3%81%93%E3%81%93%E3%81%AF%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%99%EF%BC%89" target="_blank">この調子の続きを読んでみる</a>]]>
    </description>
    <category>ネタ</category>
    <link>https://enkura.blog.shinobi.jp/%E3%83%8D%E3%82%BF/%E5%A6%84%E6%83%B3%E3%81%A0%EF%BC%81%E3%80%80%E5%A6%84%E6%83%B3%E3%81%A0%E3%81%A8%E8%A8%80%E3%81%A3%E3%81%9F%EF%BC%81%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E6%B3%A8%EF%BC%89%E3%81%93%E3%81%93%E3%81%AF%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%99%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Wed, 31 Dec 2008 16:59:00 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>かえるのメモ</title>
    <description>
    <![CDATA[<strong>2009/03/01　船上結婚式とな&hellip;&hellip;<br />
</strong>友達が結婚してた。（事後報告）　バレンタインデーが結婚記念日だそうで。<br />
披露宴は船を貸しきってのサンセットクルーズだって。<br />
最近のゼ○シィは凄いなあ&hellip;&hellip;ダイエットはじめなくては！！！<br />
<br />
<br />
<strong>2009/01/01　よろしくお願いします</strong><br />
マイペースに書き続けますのでテケトーに見てやってください。<br />
本年もよろしくお願いします。<br />
年末の忘年会でwiiが当たったぜ！　早速、聖戦とトラキアダウンロードだぜ！<br />
聖戦にどっぷり中です。うへへ。終わったらトラキアやるんだっ。<br />
（やった後にリーフとナンナ観が変わったらやだなあ&hellip;&hellip;）<br />
<br />
<br />
<strong>2008/12/01　85000円<br />
</strong>従兄の結婚式&rarr;ご祝儀50000円<br />
家の鍵紛失・新しい鍵にする&rarr;35000円<br />
なんという&hellip;&hellip;オチがついた11月&hellip;&hellip;！！<br />
<br />
FF11、はじめてみた。フリートライアルでタダだったので。<br />
冒険行かずにずっと合成していたい。合成だけしたい。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br /><br /><a href="https://enkura.blog.shinobi.jp/%E5%82%BE%E5%90%91%E3%81%A8%E5%AF%BE%E7%AD%96/%E3%81%8B%E3%81%88%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%A2" target="_blank">FF11やってみた</a>]]>
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    <category>傾向と対策</category>
    <link>https://enkura.blog.shinobi.jp/%E5%82%BE%E5%90%91%E3%81%A8%E5%AF%BE%E7%AD%96/%E3%81%8B%E3%81%88%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%A2</link>
    <pubDate>Mon, 01 Dec 2008 05:34:40 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>贅沢者は音も無く死ぬがいい　　（レスター×ティニー、シャナン×パティ）</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
　一種の既成事実って奴だわ、とパティが言うので、そこんとこ詳しくとばかりにティニーが詰め寄りました。まったく彼女らしい反応です。<br />
<br />
「だって、どうしたって年齢差は埋まらないし、身長差だって物凄いし、何もかもが違うんだもん。シャナンさまのお手伝いなんてひっくり返っても出来ないしさ」<br />
「まあ、戦場でのお手伝いはそうでしょうね。ラクチェさんのようにしろなんて無茶もいいところ」<br />
「うん。そうだよね、だから、無理なことはしないことにしたんだ。できないことはしない。あたしの身の丈に合わないことはやめたわけ。無駄だし、痛いのやだし、わけわかんないし」<br />
<br />
　パティはその年齢差とか役割の差だとか身分差、そういうものを颯爽と飛び抜けたのです。<br />
　いいじゃない、そんなの、の一言と一つの決心だけで、パティは恋する人の心を手に入れました。彼本人は未だに否定しているようですが、その否定がどんなに軟く薄いものか、彼本人もやっと分かってきたところでしょう。いちいち彼女のすることに妬くのは大人らしくないと誰か彼に説教して遣るべきなのです。<br />
<br />
「いわゆる、自分らしくってやつかね」<br />
「それだけでいいならいくらでもするのですけどっ」<br />
「レスターの前のティニーって借りてきた猫よりかわいいよねー」<br />
「かわいくいたいんですもの」<br />
「そりゃそーよね」<br />
「レスター様がかわいい子が好きならかわいくなりますし、色気があるほうがお好きならそうします」<br />
「ひゃあ、尽くすねえ」<br />
「あら、尽くさないほうが変ですわよ」<br />
「まあ、そうなんだけどー。シャナンさまの場合、シャナンさまはひとりでなんでも出来ちゃうからなあ」<br />
<br />
　あの人はまるで恋が娯楽のようで、とパティは言外にしたようなものです。<br />
　事実、パティは娯楽でもいいから手を繋ぐ理由になっていて欲しい、と思うのでした。なにもかもが違う、高望みの人なのだから、いつか泣くなら、そのいつかが出来るだけ遠くであって欲しいと願い続けているのです。棄てられた時、惨めな思い出ばかりを引用しないようにと。<br />
<br />
「レスターはどうなんだろね？　尽くす女が好きかな」<br />
「聞いてくださいましよ」<br />
「聞いたけど、なんかズレてるんだもん。お兄ちゃんに聞いてもらっても同じ。なんかこう&hellip;&hellip;前以て答えが用意してある、みたいな」<br />
「&hellip;&hellip;やっぱり、心に決めた方がいるのかしら」<br />
「ラナをどーにかしなくちゃ的なことは常に考えてるようだけど」<br />
「ラナさんには敵いませんわよ。敵おうとも思いませんけれど」<br />
「時期じゃない、ってのが正解なのかも。恋愛してる暇なんてねえよ、みたいな」<br />
「真面目な方ですもの」<br />
「糞真面目だよね。ほんとにあたしたちと血が繋がってるのかって感じよねー」<br />
<br />
　ティニーはレスターを慕っていました。誰が見てもそうでした。<br />
　ですがティニーは彼の事を何も知りません。本当に、何も知らないのです。驚くほど彼について何もわからないのです。彼についての情報はほんの少し、誰でもが知りえるものばかりでした。生真面目で、紳士的で、よく気がつき、温和な青年。誠実な言葉遣いをし、男女の隔てなく誰にでもその手を差し出す、聖人のような男。<br />
　知っているのは、それだけなのです。彼の幼馴染、肉親、誰に聞いてもこれ以上の情報が得られないのですから。必死に彼についての情報を得ようとする度、ティニーだって後ろめたさは感じるのです。これではまるで弱みを握りたいと齷齪しているようじゃないの、と。<br />
<br />
「――もし、あたしたちがすんごい平和な時に生まれてさ、普通に生活してたらさ、どんななんだろうね」<br />
「どんなって。わたくしはやっぱりレスター様をお慕いしますでしょうね」<br />
「そっかあ。あたしはどうだろ、シャナンさまには憧れて終わりかなー。平和な時代だったら、シャナンさま、とっくに結婚して二児のお父さんって感じだもんねえ」<br />
「パティさんたら。そんなこと仰るの？」<br />
「うん、だって、うん、&hellip;&hellip;現実ってそういうもんでしょ？」<br />
<br />
　わかっているのかしら、とティニーは明後日を向くパティを見るのです。<br />
　その、捕まえた途端に逃げて行く準備を整えてしまったところに、彼が心底から慌てていることを分かっているのでしょうか。それまでは少女らしい思慕を身体いっぱいに広げていたというのに、突然萎んでいくのです。それも、理由もなく。<br />
<br />
「でも、ま、もしなんて話してたらキリないねー」<br />
<br />
　けらけらと笑い、パティは言うのです。すっかり少女らしくない憂いなど脱ぎ捨てていました。<br />
<br />
「あれこれ言ったってさァ、結局無いもの強請りじゃない。贅沢者だよね」<br />
「&hellip;&hellip;ええ。わたくしも、そう思います。もし、なんてものがなくても、わたくしは構いませんわ。常に、きっと常に、最良を選んでいると自負していますから」<br />
「言うねー。そうだよね、そうしちゃったほうがいいもんね」<br />
「ええ」<br />
<br />
　贅沢は言うものではないわ、とティニーはほほえみながらおのれに言い聞かせました。<br />
<br />
「わたくし、レスター様を慕うように信じるように、わたくし自身も信用することにしてますの」<br />
<br />
　と、最後に付け加えると、パティは不思議そうな顔をティニーに見せました。<br />
　そしてたっぷりと間を空けた後、そうだよねえ、とパティはほほえみました。――とても少女らしい、明々とした笑顔でありました。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br /><br /><a href="https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E8%B4%85%E6%B2%A2%E8%80%85%E3%81%AF%E9%9F%B3%E3%82%82%E7%84%A1%E3%81%8F%E6%AD%BB%E3%81%AC%E3%81%8C%E3%81%84%E3%81%84%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%C3%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%80%81%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%8A%E3%83%B3%C3%97%E3%83%91%E3%83%86%E3%82%A3%EF%BC%89" target="_blank">蛇足</a>]]>
    </description>
    <category>短編</category>
    <link>https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E8%B4%85%E6%B2%A2%E8%80%85%E3%81%AF%E9%9F%B3%E3%82%82%E7%84%A1%E3%81%8F%E6%AD%BB%E3%81%AC%E3%81%8C%E3%81%84%E3%81%84%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%C3%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%80%81%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%8A%E3%83%B3%C3%97%E3%83%91%E3%83%86%E3%82%A3%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Wed, 26 Nov 2008 15:04:17 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>霞向こうの連呼　　（レスター×ティニー）</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
　身悶えする少女が目の前に居たら、あなたならどうしますか。<br />
　ふるふると小刻みに震え、時々、呻き声に似た危険な鳴き声をあげています。少女は目の前のテーブルクロスをこれでもかとばかりに握り締め、お陰さまでテーブルクロスの上の一輪挿しやらパンの入った籠やらが、今まさにその本来の役目を放棄せざるを得ないと覚悟をする時間が差し迫っているようでした。<br />
<br />
「おい」<br />
<br />
　声を掛けても、少女は悶え続けていました。哀れではありません。この阿呆、と思うだけでした。<br />
<br />
「おい、ティニー」<br />
<br />
　声を何度掛けても少女はテーブルクロスを離しませんでした。うんざりしたので、花瓶と籠を救出し、彼らを窓際へと避難させました。もちろんパンの皆様には、本来ならば淑女に捧げられるべきハンカチーフを被せて差し上げます。<br />
　ようやく自由の身になったテーブルクロスは静かにテーブルから舞い降りて、名前をただの布に変えました。この地方のよくあるパターン柄が染められたテーブルクロスには、ところどころお茶やらソースやらが落ちており、あんまり美しくない状態でしたが、そんなことは少女には関係ありません。布で、掴めて、身悶えの興奮を精一杯に受け止められる対象であればいいのです。<br />
<br />
「この女はどうしてこうなんだ&hellip;&hellip;」<br />
<br />
　悶えている少女の真正面には、窓。おそらくそこから見たのでしょう、恋する青年の姿など。<br />
　もしかして賢明に手を振った少女に気付き、手を小さく振り返してくれたのかもしれません。いやいや、そんなご褒美みたいなことではなく、ただ見ただけかもしれない――そうそう、恋した青年は昨日の今日まで本隊から離れていたのです。<br />
　と、まあ、この少女がこんな風になる原因も理由もたったひとつしかないのですから、なんと平和なことでしょうか。<br />
<br />
「レスター様」<br />
<br />
　うっとりと少女は呟きました。よくもまあ、ここまで我を忘れることが出来るものです。それが恋よ、と言ってはお仕舞いなのですが。<br />
<br />
「レスター様、やっぱりお慕いしてますわ&hellip;&hellip;」<br />
「おい、ティニー」<br />
「なんてすてきなの、ああ、お戻りになったばかりで乱れた髪が&hellip;&hellip;わたくしったら、きゃっ」<br />
「きゃっ、じゃねえ、おい、オラ」<br />
「外套が随分汚れて解れていらして&hellip;&hellip;繕って差し上げたい&hellip;&hellip;もう、でしゃばりね、ティニーったら！　」<br />
<br />
　なんでまた彼女を呼びに自分が指名されたのかさっぱり分かりません。同じタイミングで後詰の部隊を出すからなのですが、そのような希望を出した覚えはありません。誰だこの嫌がらせを仕組んだのは。<br />
<br />
「レスター様&hellip;&hellip;わたくし、わたくし、」<br />
「レスター様レスター様うるせえぞ、他にもなんか言ってみろ」<br />
<br />
　あんまりにも彼女が<strike>鬱陶しい</strike>つれないので思わず、こんな言葉を呉れてやりました。すると少女は途端に振り向き、怒りが半分入った表情で見つめるではありませんか。<br />
<br />
「他にもって――何ですの。デルムッド様とでも言えと？」<br />
「呪いの言葉だろうが」<br />
<br />
　テーブルクロスを握ったまま、少女は呆れ顔でデルムッドを睨めつけるのです。<br />
<br />
「レスター様レスター様言い続けて何が悪いんですの。大体、あなたがいけないんですのよ。普通、乙女が恋に悶えている瞬間を目撃したら何も言わずドアを閉めてレスター様とわたくしの仲を取り持つものなのに！　いたわりという精神があなたには欠けていますわ！」<br />
「どこの普通だそれは。そんなサービスうちにはない」<br />
「投書しますわ、投書！」<br />
「してみろ、赤で訂正入れて返答してやるぜ。恋文書きのティニー？　スペルが三つほど間違ってたぜ」<br />
「くっ&hellip;&hellip;！　レスター様に指摘してもらってドジっ娘アピールするつもりだったというのに&hellip;&hellip;！」<br />
<br />
　先日、少女の書いた恋文を何の因果か、拾ってしまったのです。拾った方も何の因果だ、と思ったのですけれども。<br />
　まさか中身を読んではいません。それくらいの良識はありました。しかし、風のいたずら時のいたずら、まあ、結果的に読んでしまったのです。――レスター様、お慕いしています、の文字を。スペルは間違っていたのでレシター様でしたけど。<br />
<br />
「ほら、とっとと行くぞ」<br />
「行きますけど！」<br />
<br />
　ぱっと彼女は布を手放し、椅子に掛けました。ふくれっ面の彼女の腕を取り、ずんずんと大股で部屋を出ようとすると、唐突に叫びだしたのです。<br />
<br />
「レスター様レスター様レスター様ぁぁぁああ！」<br />
「俺が誘拐犯みたいに思われるような声は出すな！」<br />
「レスター様レスター様レスター様ッ！　意地でもレスター様に助けてもらいます！　乙女の恋文を覗くのは乙女の下着を覗くも同然！　今決めました！」<br />
「こらっ、逃げるなッ！！」<br />
「いやぁああっ、レスター様ぁあああ！」<br />
<br />
　それはそれは――まあ、じゃれあいでした。<br />
　どこからどうみても完璧なじゃれあいでしかありませんでした。ぎゃあぎゃあと同じ年頃の少年少女が言い合い、逃げては追いかけているのですから。恋人たちの痴話喧嘩のような低温の必死さなんて全く無いのです。大変健全で清々しいと、誰が見たって思うはずでした。<br />
　彼以外は。<br />
<br />
（声は聞こえないけれど）<br />
<br />
　生き生きと走り回る彼女が目に新しい、と思ったのです。彼の知る彼女はいつだって温和しく、慎ましやかで、俯きがちなのであまり視線も合わせられないひとでした。その彼女が、走っている。しかも、とても必死に。ああ、馬の嘶き、沢山の鎧の立てる音、そんなものたちが無かったら聞こえるでしょうに。<br />
　兄弟のように育ったデルムッドがあれほど顔色を変えて女の子を追いかけるとは。<br />
<br />
（&hellip;&hellip;仲が、いいんだな）<br />
<br />
　自分の妹にすら素っ気無い弟分。誰に対しても内気な少女。<br />
　ふうん、と彼は内心で呟きました。そうなんだ、とも胸に我が声が響き渡るのです。とても、不思議な反響の仕方をしていました。<br />
<br />
（そうなんだ）<br />
<br />
　散開させるべき部隊の真ん中で、様々な音の真ん中で、思うのです。<br />
　今日の天気は素晴らしく、風も無く雲も無く、戦場は遠く――彼らもまた遠くにあると、思わずにはいられないような気がしたのです。知らない姿を見せつけられているようで、口の中がやけに苦くなったように感じました。<br />
<br />
（そうなんだ）<br />
<br />
　離れた場所でも彼らの姿は良く見えました。彼らはまだ、こちらに気付かない。きっとあれが二人の世界というやつなのだろうと納得すると――<br />
<br />
（くだらない）<br />
<br />
　と、彼は自らを嘲笑し、目を閉じました。一体何を考えているのだと自らを貶したのです。<br />
　再び目を開くと、すぐに様々な指示を下して散開を命じ、彼らが目に入らないように彼らから離れていきました。<br />
<br />
（なにを考えたのだろう、私は）<br />
<br />
　くだらない疑問に答えはない。<br />
　雲の無い空を見上げながら、立ち去っていきました。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br /><br /><a href="https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E9%9C%9E%E5%90%91%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%AE%E9%80%A3%E5%91%BC%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%C3%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%BC%EF%BC%89" target="_blank">蛇足</a>]]>
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    <category>短編</category>
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    <pubDate>Tue, 25 Nov 2008 15:00:00 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">enkura.blog.shinobi.jp://entry/111</guid>
  </item>
    <item>
    <title>幻の物語　　（レスター×ティニー）</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
　彼女は諦めない。常に、一秒先の奇跡を信じている。<br />
　なんて不思議なひとなのだろう、とユリアには思えてならないのです。何故、彼女はこんなにも折れないのだろうかと。彼女の想い人は彼女の想いをまったくと言っていいほどさらりとかわし、明後日の方向に手を振っては彼女を見惚れさせているばかりなのです。<br />
　どうしたもんかね、とは彼女の兄の言葉でした。かわいい妹の恋を実らせてやりたいけれども相手は気付かず、だからといってただで手伝ってやるのも癪なのです。お兄様は黙ってて、と突っ走る妹の後姿を眺めては、そんなことを言いました。<br />
<br />
（恋ってやっぱりそういうものなのかしら）<br />
<br />
　小説や絵本はユリアに恋を教えました。誰かの噂話や誰かの実話がユリアに恋の夢を持たせました。<br />
　美しくて、楽しくて、時々ひどく悲しくなるけれども、それでも離せない棄てられない素晴らしいものだと語ったのです。なるほどそういうものなのだろうと納得するほかはありません。知らないのですから当然の事でした。<br />
　ですから、ユリアはそれら各種の条件に当てはまる状態を恋と呼ぶのだ、と感情の分類の仕方を覚えたのです。セリスを一目見たとき、ああ、これが恋というものなのかしら、と感じたのは知識の総動員の結果でした。<br />
　彼は、皆が教えてくれた「理想通りの人」に最も近かったのです。誠実で、優しくて、優男。身分があり、周囲から尊敬され、自分に対して特別な関心を向けてくれる。<br />
<br />
（ティニーさんはまるで恋愛小説の女主人公。一途にレスターさんを慕って、レスターさんの為になることをずっと考えて、レスターさんに好かれるように努力している姿がとっても眩いもの）<br />
<br />
　きっとその本の読者は彼女の恋が成就する瞬間を想像しながら、物語を楽しむのです。彼女がどれだけ懸命なのか分かれば分かるほど、読み手は手に汗握るのです。<br />
　今日もまた捕まえるべき偶然を探しに彼女は出掛けました。恋の尻尾はなかなか見つからないのですけれど、と嘆きつつも、一秒先の幸福を信じる彼女には絶望の文字はありません。いつだって目は輝き、頬は赤く、恋を語るときの彼女はとてもかわいらしい姿なのです。つまり、いつでも彼女はかわいらしい。彼が気付かないことがおかしいのです。<br />
<br />
（甲斐のない恋なんてないと聞きます。意味のない恋もないと）<br />
<br />
　セリスへ抱いた「恋の状態」は、すぐに冷めていきました。彼が幼馴染に夢中である姿を見たからかもしれませんし、特別が特別でなかったと気付いたことも理由にあるかもしれませんが、何よりも大きな原因は、恋をしたからなのです。<br />
<br />
（主人公には必ずすてきなご褒美が待っていなくてはいけないわ）<br />
<br />
　恋をすると、自分が自分の人生の主役であることに気付く、とある小説はユリアに教えました。彼が生きている世界を祝福するためには、自分が同じ世界に生きていなければ出来ないのよと。まったくもっともな意見だと実感し――恋の尻尾を掴んだのです。<br />
　セリスの幸福に関われたらいいな、とは思いましたが、願ってはいませんでした。幸福には「連れて行ってもらうもの」だと思っていたからです。セリスが手を引いてくれると信じていたのです。それが、真の幸福だと。<br />
<br />
（あらゆる神々に懇願しましょう。ティニーさんの恋が報われますように）<br />
<br />
　ぐるりと周囲を見渡し、地平線の果てに彼が居たなら足が折れようと走るのが、ティニー。<br />
　彼が走る彼女に気付くか気付かないか、それは彼と神々だけが知る、彼女にとっての最大の神秘。<br />
<br />
（――わたくしの物語が、はじまりますように）<br />
<br />
　空を仰ぎ、ユリアは目を閉じました。息を止め、あの視線を今日こそ受け止められる強さを持つのだと暫くの間、そうしていました。<br />
　彼は、ユリアにとって、最大の神秘でしたから。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br /><br /><a href="https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E5%B9%BB%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%C3%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%BC%EF%BC%89" target="_blank">蛇足</a>]]>
    </description>
    <category>短編</category>
    <link>https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E5%B9%BB%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%C3%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%BC%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Mon, 24 Nov 2008 15:00:00 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>空飛ぶ本分　　（レスター×ティニー）</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
「では、三十年ものということで」<br />
「ありがとう、フリージ公。ご理解いただけて嬉しいよ」<br />
「いえ、当然の事です。森は財産ですわ」<br />
<br />
　終戦後、グランベルとヴェルダンの対等な交渉は幾度なく行われましたが、ヴェルダン側に公爵を派遣しての直接交渉はこれが初めてのことです。派遣されたのはフリージ女公爵、グランベルで最も木材に困る女性でした。<br />
　交渉はテーブルを置いて向かい合う形ではなく、人間の手が入った森林――いわゆる里山で行われました。見てもらうのが一番いいだろうから、と温和な青年王が提案したのです。グランベル側はそれに面食らいましたが、全権大使として派遣された女公爵がよろしいと言うのですから従うほかにありません。ぴかぴかの靴を汚し汚し山道を歩く羽目になりました。<br />
<br />
「木材というものを、わたくし、ちっともわかっていませんでしたわ。お恥ずかしい」<br />
「いえいえ、よくご存知です。女性であれほどの知識を持っているのは樵夫のおっかあくらいです」<br />
「おっかあ、ですか」<br />
「はい、おっかあです」<br />
<br />
　背の高い青年王がにっこりとほほえむので、女公爵も同じようにほほえみかけました。<br />
<br />
「見栄えはね、それはやっぱり百年、二百年ものには叶いません。高くも売れるでしょう。でもそれはしていけない状態にあるのです。戦乱の中、我々は生き延びるために随分それらに日々の糧を購ってもらってしまったので」<br />
「耳が痛いですわ。フリージ周辺の森という森、林という林、丸禿になってしまいましたの。フリージは天災の少ない土地ですが、学べば学ぶほど愚かな真似だったと思います」<br />
「いえ、フリージはすぐにでも夜露をしのぐ家が必要だったではありませんか。木を、どうか植えてください。三十年、子供を育てているうちに森はまた身近なものになっていますよ」<br />
「ええ。個人的にフリージで木の苗を頂いても？」<br />
「もちろん。どんどんお買い上げください。助かります」<br />
<br />
　時々風に遊ばれて女公爵の被る帽子の広いつばが揺れました。<br />
　グランベルで流行りだした帽子であるらしいのですが、青年王はそれをちっとも知らず、優雅なものだなあ、と嫌味なくその帽子を眺めるのです。淡い色のリボンが後方へ流れ、山頂から吹き付ける風の強さを具体的に教えました。<br />
<br />
「足は痛くないですか」<br />
「はい。平気です」<br />
<br />
　女公爵は山登りに相応しくないような姿でした。ですが、いいのです。彼女は公爵なのですから。<br />
　青年は王として、ひっそりとこの交渉団を木陰から見つめる山の民達に、彼女を見せてやらなければならないのです。貴種との出会いは一生の宝となり得ることを青年王は知っていました。そして、憧れが人を活かす動機になることも、この国で知ったのです。<br />
　広いつばの帽子を淡い色の布で押さえ、同じ色のドレスと靴。控えめな装飾に、嫌味のない笑顔。どこからどう見ても、貴族のお嬢様。しかも、大都会グランベルのお嬢様。まったく、目の保養とはこういうものでしょう。山の民達の顔ときたら、うっとりと里山の珍客を見つめているのです。<br />
<br />
「ところでフリージ公」<br />
「なんでしょう」<br />
「ラナもそんな帽子を？」<br />
「&hellip;&hellip;王后陛下もお持ちですわ。白色のお帽子をおつくりになったばかりですって」<br />
「贅沢をしていないかな。我儘はしていないだろうか」<br />
「むしろなにも仰らなくって困っているそうですわ。ユリアさんからよく手紙を頂戴しますの。どうしたものかしらって」<br />
「それはそれは――まったく、あいつときたら」<br />
「ご心配されるようなことは何一つございませんわ」<br />
「あなたから見ても？」<br />
「ええ。窮屈なのは仕方ありませんけれども」<br />
<br />
　ラナさんのお話をもっと書きますわね、と女公爵は笑いました。何故か彼女は青年王に対し、書状ではなく手紙を送るのです。彼が心配して止まない妹のこと、グランベル全体の事、周辺諸国の様子に物価のこと、とりとめのないことばかりでしたが、この手紙が青年王にとって数少ない愉しみでした。<br />
　何故か彼女は、彼に親切なのです。<br />
<br />
「ヴェルダンに篭っているのでちっとも周りが分からない。あなたの手紙はとても嬉しいです」<br />
「&hellip;&hellip;そういっていただけると。ご迷惑ではないでしょうか」<br />
「まさか。本来ならラナがこういうことをするのでしょうけれどね、ラナはまったく手紙を寄越さないんですよ」<br />
「それはレスター様を信頼していらっしゃるから」<br />
「いやいや、そういう奴ではないんですよ――おっと」<br />
<br />
　強い風が、吹き付けました。<br />
　彼は慌てて彼女の手を掴んで、我が身に寄せ、帽子が飛んでいかないようにと庇ったのです。<br />
<br />
「れ&hellip;&hellip;レスター様、あ、あの&hellip;&hellip;」<br />
「あ。失礼。ああ、ごめん、気を悪くした？」<br />
「い、いえ、ちっとも、あの、やだ、その」<br />
<br />
　顔を真っ赤にしているところを見て、青年王はなんということをしてしまったのだ、と思いました。年頃の女性に軽々しく触れるとはなんたる暴挙か。想い人もあるだろうに、好きでもない男に手を掴まれるなどしたら、今晩は枕を涙で濡らすかもしれないではありませんか。<br />
　青年王は身を屈めると、まだばたばた言う帽子のつばを押さえました。<br />
<br />
「どうも不躾で、考えなしで&hellip;&hellip;」<br />
「レスター様はっ、誰よりも紳士でいらっしゃいますわ」<br />
「本当の紳士なら山道は歩きません――戻りましょう。すっかり連れ回してしまった。足が痛むでしょう」<br />
「いえ！　わたくしなら大丈夫です、平気です、ちっとも辛くなんかありません」<br />
<br />
　妹なら、とっとと戻っていることでしょう。何も言わずくるりと背を向けるのです。<br />
<br />
「中腹の里山にフリージに下さる木材があるとレスター様は仰いましたわ。わ、わたくしはフリージ女公爵としてそれを確認しなくてはいけませんしっ」<br />
「それは他の人に任せませんか」<br />
「そういうわけにはいきません、&hellip;&hellip;と、思いますの&hellip;&hellip;」<br />
<br />
　帽子のつばは大人しくなり、青年王は手を離しました。<br />
　女公爵はなにか悪いことをしてしまったかのような顔をしています。彼女は何一つ悪くないというのに。青年王はなんとかして彼女を連れ帰らなくてはいけないと思い、ふと、思いついて口を開きました。<br />
<br />
「帽子が」<br />
「帽子？」<br />
「飛んでいってしまうかもしれませんよ」<br />
「いいんです」<br />
「いいんですか」<br />
「はい、いいんです」<br />
<br />
　帽子が揺れたのは、彼女が小首を傾げたからでした。<br />
<br />
「帽子の本分ですわ」<br />
「本分ですか」<br />
「ええ。帽子って、飛ぶものなんです」<br />
「被るものでしょう？」<br />
「帽子は、飛ばすために被るんですの」<br />
<br />
　なんとも可笑しいことを言っている――けれど、女公爵は笑っているのです。愛嬌のある笑みが、帽子のつばと一緒にふわふわと揺れていました。<br />
　女公爵の意味するところが全く分からず、青年王は微苦笑を浮かべ、降参、と伝えました。すると彼女はうっとりと頬を染め、視線を伏せ、言ったのです。<br />
<br />
「レスター様に取っていただくために、帽子を被りますのよ」<br />
<br />
　なるほど、と青年王は頷きました。<br />
<br />
（彼女の帽子は、飛んだほうがいい）<br />
<br />
　何故なら――自分もそのほうがいいなと、ほんの少しでも願ったからでした。<br />
<br />
<br />
<br />
<br /><br /><a href="https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E7%A9%BA%E9%A3%9B%E3%81%B6%E6%9C%AC%E5%88%86%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%C3%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%BC%EF%BC%89" target="_blank">蛇足</a>]]>
    </description>
    <category>短編</category>
    <link>https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E7%A9%BA%E9%A3%9B%E3%81%B6%E6%9C%AC%E5%88%86%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%C3%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%BC%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Sun, 23 Nov 2008 15:00:00 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>永遠の道すがら　　（レスター×ティニー）</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
　再会したその日に嫁にいったようなものだ、と後々、彼女の兄は語ることになります。<br />
<br />
「あら、お兄様、よくわかっておいでだったのですね」<br />
<br />
　と、妹は照れもせずに返すのですが。<br />
　妹ティニーはつくづく、恋の奴隷でした。恋した相手の奴隷ではありません。恋の、奴隷なのです。その恋とやらがいつ始まったかなんぞ兄にはわかるはずもないのですから、まさに、永遠の、という枕詞を付けてあげるべきでしょう。ハイ今から始まりますよなんていう永遠など聞いたことがないではありませんか。<br />
　彼女の恋は恐るべき持続力を持ち、愛情が恋を包むのではなく、イコールになるまで広げ濃密にする努力をしました。それは身内贔屓の感想なのではなく、第三者から見てもそれは凄まじいまでの練磨だったのです。<br />
<br />
「レスター様にとっての一番で居続けたいだけですわ」<br />
<br />
　相思相愛になっても、結婚しても、子供が生まれても、年をどれだけ重ねても、彼女は常に一番を目指していました。すでに一番かもしれないという油断など、彼女はしたことがあるのでしょうか。それほど熱心に、彼女は恋の奴隷として生きていました。<br />
　ティニー・ティナルディエという女性は、そういう女性であったと後世の歴史書はしつこいくらい語るのでした。<br />
<br />
<br />
<br />
　フリージ女公爵としての名を棄て、血縁者にそれを譲り、自分はヴェルダンへ嫁ぐ、とティニーがセリスに報告した時の事です。彼女は顔を上げ、まるで軍場に在るかのような表情で、セリスと向き合いました。セリスはいつか言い出すだろうなあ、とは考えていましたが、こんなに早く――まだ二年しか経っていないというのに！――彼女が切り出すとは思ってはいなかったのです。<br />
　もう少し、あと三年くらいは待っていて欲しかったというのがセリスの心情でした。<br />
<br />
「あとちょっと待ってよ」<br />
「何故でしょう」<br />
「ヴェルダン、まだ大変な時期だし」<br />
「それなら傭兵にでもなりますわ」<br />
「いやいやいやいや、フリージ女公爵にそれはないよ」<br />
「だからお返ししますと言いました」<br />
<br />
　熱烈に、彼女は恋をしていました。そしてその恋の為に、ありとあらゆるものを棄て去り、困難を掻き分け、ドレスをたくし上げて走り去ろうとしているのです。<br />
<br />
「正直に言うよ、フリージ女公爵。ぼくの立場としては、きみを高くヴェルダンに売らなくちゃいけない。だけど、あまり高すぎてはいけないんだ。なぜならぼくらの戦いの走りはヴェルダン側に非がある、とぼくは断じていないからだ。グランベルとヴェルダンは『お互い様』であることが前提なんだ。<br />
　つまり、二国の国力が拮抗する状態がもっとも好ましい。きみにとって幸運なのはヴェルダンがそれほど荒れたわけではなく、グランベルが満身創痍で終戦を迎えたことだ。ヴェルダンの発展は目覚しいけれど、まだグランベルには追いつかない、というのが一般的な見方だねえ。国の格、と人はいうけれど」<br />
「格ですか。まあ、フリージは大グランベルの反逆者であり、汚名ばかりが財産の名家ですわね。ヴェルトマーも散々ですが、フリージも散々ですわ。兄と共に贖罪よろしくグランベルに尽くすべきでしょうと、わたくしだって思いましてよ。まあ、そのくらいの格ならばフリージにはありますけれど。でも、格やらなにやらで思い悩む暇はありませんし、わたくしはそういうわけにはいきませんの」<br />
「いかないか」<br />
「いきませんわね。だから、お返ししますと言ったのです」<br />
<br />
　私が公を超えた、と彼女は言いました。<br />
<br />
「わたくしは、ただのティニー・ティナルディエであることを選びます。レスター様がヴェルダンにいるなら行くべきなのです。おいでと言ってくださったなら尚更です。あの方がわたくしを邪険にされて、この恋には応えられないときっぱり言ってくださるまで、わたくしの恋は永遠なのです。とっても愚かしくみえますでしょ？　わたくしには胸を張るほどに誇らしいことなのですけれども」<br />
「うん、って言ってくれたのに。フリージを頼んだよ、ってぼくが言ったとき、ティニーは可愛らしく頷いたじゃないか」<br />
「あら、いつまで、とは言われませんでしたけれど？」<br />
「言ってないけどさー&hellip;&hellip;」<br />
<br />
　恋をすると女性は美しくなるというけれど、それは違うな、とセリスは思いました。<br />
　強くなるのです。勇気に溢れるのです。なにより図々しくなるのです。<br />
<br />
「フリージは相変わらず散々です。そしてわたくしではフリージは御せません。わたくしはフリージにおいて完全に無能です。百害あって一利もなしですわよ」<br />
「そんなこと言うのかい」<br />
「言いますわよ。フリージがどれだけ保守的な土地か、ご存じなくて？」<br />
「知ってる心算だったけれどね。そうか、きみでも駄目かい」<br />
「一度系図から消された母とわたくしではいけませんわね」<br />
「うーん&hellip;&hellip;ヴェルトマーは治まったのになあ」<br />
「ヴェルトマーは縋るものがお兄様しか居りませんもの」<br />
「アーサーがフィーと結婚する前は凄かったけどね。とにかくユリアを呉れって。こちらで引き取りますとまで言われたよ」<br />
「お兄様はご結婚されて正解ですわね」<br />
「そうだね。ユリアは&hellip;&hellip;まあ、どうにかなるんだろうけど」<br />
「その物言いもまた無責任ですこと」<br />
「うん、そうなんだけども。ほんとにそういうものなんだよ」<br />
<br />
　フリージほど統治の難しい地域はありませんでした。それを知ってセリスは格段に心を砕き、コープルの協力も引き出し、かなり穏便な政策を執ったのです。女という性差、政治家に向かないティニー本人の性質、反逆者の反逆者というティニーの「身分」――何をとっても、巧くいくはずはなかったのです。精一杯、皆でどうにかしようと努力はしたのですが、総てが裏目裏目へ出る悪循環が続いていました。<br />
　あの人の娘で、とにかく正統なんです、ということだけで治まるなら戦争なんてものはもとからなかったでしょう。<br />
<br />
「わたくしがフリージ女公爵として出来る最大にして唯一の事は、わたくしのいとこ殿に全権を譲り渡すこと以外に何もない、と愚考いたします」<br />
「――そこまで言うかい」<br />
「ええ」<br />
「レスター様がフリージのことを知っているのかどうか、この際はまったく関係ございません。わたくしはグランベル全体のことを考えて、ヴェルダンに参ります。そしてそれは出来る限り早くがよろしいでしょう。もうすぐ秋ですわ。俸給改めの時期が来る前が最良かと」<br />
「&hellip;&hellip;まあね。給料くれる人が上司だからね、基本は。それで、きみのいとこ殿はどうかな。フリージ貴族たちと仲良しかな」<br />
「ええ、とっても」<br />
「それなら、いとこ殿の子供をひとり、ぼくが貰うことになるけれど。ぼくとラナの息子か娘の伴侶としてさ」<br />
「二つ返事だと思いますわよ」<br />
「そりゃあいい。それと、もし万が一、きみの子供にシルシがある子が生まれたら即刻フリージ公爵家に養子へ出してもらうことになるけど？」<br />
「構いませんわ。存分に誇り高く育てばよろしいでしょう」<br />
「レスターに相談しなくてもいいの？」<br />
「もうお許しは頂いております」<br />
「やっぱり。レスターは相変わらず気が利くなあ」<br />
<br />
　セリスは彼の穏やかな横顔を思い出していました。<br />
　彼は彼女の事情を知っているでしょうか――多分、知っているけれど知らないふりをしているのだろう、と思うのです。彼女に決して同情をしないことで彼女を認め、慰め、黙って彼女を受け入れるのだろうと。<br />
　そういう男なのです。無駄なことはしないのです。はじめからどれが無駄なものかを知っているかのように振舞える、なんとも羨ましい男でした。<br />
<br />
「分かったよ。緊急に皆を集めよう。そしていろいろ根回ししたりしたりするから、やっぱり今年の秋までは無理だよ。せめて来年にしてくれないかな」<br />
「来年でもよろしいのならば」<br />
「来年の夏にしようか。あの国は青空が似合うもの。一番きれいな時期にいくといいよ。きみにも夏が似合うしね」<br />
「まあ、お褒め頂いて」<br />
「特別だよ。ぼくは基本的にラナしか褒めないからね」<br />
<br />
　後世が彼女をなんと評するのだろうか、とセリスはふと思うのです。<br />
　恋にすべてを捧げた人だというのだろうか。無責任な政治家崩れとでもいうのでしょうか。<br />
<br />
「真っ白なドレスでお嫁にいきなよ」<br />
「ええ、ドレスをたくし上げて走って参りますわ」<br />
「もろ肌見えちゃうよ」<br />
「急いでおりますから御免くださいませね」<br />
<br />
　にっこりとほほえむ彼女を見ると、<br />
<br />
（違うな。レスターが人生を預けるに価する男だということを知っている、賢い女性だっただけだ）<br />
<br />
　同じようにはにかむ彼の顔が思い浮かぶように思えました。<br />
　きっと並んだらとてもすてきなのだろうとも、思うのでした。<br />
<br />
<br />
<br />
<br /><br /><a href="https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E6%B0%B8%E9%81%A0%E3%81%AE%E9%81%93%E3%81%99%E3%81%8C%E3%82%89%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%C3%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%BC%EF%BC%89" target="_blank">蛇足</a>]]>
    </description>
    <category>短編</category>
    <link>https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E6%B0%B8%E9%81%A0%E3%81%AE%E9%81%93%E3%81%99%E3%81%8C%E3%82%89%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%C3%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%BC%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Sat, 22 Nov 2008 15:32:06 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">enkura.blog.shinobi.jp://entry/108</guid>
  </item>
    <item>
    <title>エアリーディング・プロフィール　　（セリスと馬鹿ども）</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
「こんにちは。みんなのセリスだよ。<br />
　オイフェにそろそろ<strong>空気を読んでもいい年頃ですぞ</strong>って言われたから、空気を読もうと思う。これまでのぼくは、ほんとぼくがいいように生きてきたわけですよ。ラナかわいいと思って生きてきたわけです。ラナはどうしてそんなにきらきらしているんだろうとか思ってたわけです。あ、今更？　今更だったね、えへへ。<br />
　あ、スカサハ、そこで他人の振りをして出て行こうとしてるファバル捕まえて。駄目だよファバル、ぼくはまだ前置きさえ喋っちゃいないっていうのに。我慢して座っててよ、それが空気を読むってことじゃあないかね！？」<br />
<br />
　緊急という言葉を辞書で調べろと何度言ったって、この男は辞書さえ開こうとしないのです。<br />
　毎度毎度緊急緊急と駆け付けてみれば、大体はこの男の遊びに付き合う羽目になるのです。狼少年よろしく、無視するわけにもいかないのが悲しいところ。彼は遊びに関してだけは周到な準備を施し、ご同輩である友人たちと馬鹿をするのに命さえ平気で賭けるのです。<br />
　詰まるところ、馬鹿なので。<br />
<br />
「うん、そう、座っててね。<br />
　で、話をまとめるどころか展開もさせずにとっとと結論を言うとだね、面談します。ぼくが呼ぶから個室でぼくとお話しますので、よろしく。真面目な内容だからビビって順番待ちしててね！」　<br />
<br />
　彼が本当に真面目な話をするときは、誰も他人が気付かないくらいにこっそりか、もしくは天幕の中で堂々と切り出すはずでした。<br />
　愛想良く笑う彼に対し、友人と呼ばれたくない友人たちは、<br />
<br />
（今度は何をやろうっていうんだ、この馬鹿は）<br />
<br />
　と、まったく同じ事を考えるのです。まったく仕方のないことです。<br />
<br />
「さあ、ということで、オイフェー。準備できたー？」<br />
「セリス様ー、ラクチェとティニー殿がちょっと&hellip;&hellip;」<br />
「あー、そーなんだー。時に、アルテナ王女はどうしたかな？」<br />
「ちょっとまってよ、姉上になにを」<br />
「フィン殿をフルボッコ中です」<br />
「あ、なんだなんでもないか」<br />
「リーフ、お前もあいつの身内だよな、本当に&hellip;&hellip;」<br />
「褒めてるように聞こえないってば」<br />
「褒めてねーよ」<br />
<br />
　その別室とやらから聞こえるオイフェの声は、常日頃と変わらず落ち着いたものでした。セリスはうんうんと何度か頷き、おもむろに、男どもを真正面から見つめ、ひどく真剣な顔になりました。なんだこの馬鹿は、と思いつつも黙ってあげると、セリスはにっこりとほほえみ、<br />
<br />
「さあ、ぼく以外は絶望するといいよ！　やったあ！」<br />
<br />
　と、言ったのです。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
―リーフくん―<br />
<br />
「おめでとう、リーフ王子」<br />
「ありがとう、セリス皇子。なんの寝言かな」<br />
「婚約おめでとう！」<br />
「ありがとう！　まだプロポーズすらしてないよ」<br />
「じゃあ、今すぐしてね」<br />
「いやあ、それはナンナの気持ちをね」<br />
「その件なんだけど」<br />
<br />
　ずずい、とセリスはリーフに近寄りました。<br />
<br />
「<strong>リーフ&times;ティニー</strong>でいってもらおうかと」<br />
「&hellip;&hellip;は？」<br />
「リーフ&times;ナンナなんだよ、王道って。でもナンナは残念ながら他でフラグ立ってるので没シュート」<br />
「没シュートされるようなもの賭けてないから。というか、メタ発言は止めなよ」<br />
「いやあ、今回のテーマはメタ的に空気を読むこと＝王道で行こうという企画だから」<br />
「馬鹿だろ、君」<br />
「褒められた！」<br />
「馬鹿！」<br />
<br />
　身内だけあって、ひどくぐだぐだです。<br />
<br />
「リーフ&times;ユリアも候補だったんだ」<br />
「だったんだ、って君」<br />
「ということで、ティニーに薔薇の花束を渡してご結婚よろすく」<br />
「かわいく発言してるつもりなんだろうけど死ぬほど腹が立つんだけど」<br />
「隣室でティニーが待ってるよ♪」<br />
「待て待て、よーく考えよー。もし僕がティニーさんと結婚したとして、フリージはどうなる？」<br />
「<strong>&rarr;フリージは　このおれさまが　いただいたぜ！</strong>」<br />
「<strong>&rarr;ころしてでも　ナンナを　うばいとる</strong>」<br />
<br />
<br />
<br />
―スカサハくん―<br />
<br />
「あー、酷い目に遭った。でも勝負に勝ったぼく超かっこいい。やあ、スカサハ」<br />
「順番的にアレス王子だと思うんですが&hellip;&hellip;」<br />
「あ、彼はオチだから最後なんだ。もう読めると思うけど」<br />
「はあ」<br />
<br />
　セリスは用意されていたらしき書面に目を通し、ごほん、と咳払いをしました。<br />
<br />
「えーと、スカサハ」<br />
「はい、なんでしょう」<br />
「きみの父上はホリン殿という剣士だったね」<br />
「え？　ち、父はドズルの男だったとー&hellip;&hellip;」<br />
「うん、でも、<strong>検索で４倍以上差がある</strong>んだ」<br />
「え？　え？　で、でもですね」<br />
「空気を読もうよ、スカサハ。エアーリーディング！」<br />
「え？　え？　あの？」<br />
<br />
　そういうことなのさ、とセリスはスカサハの肩を叩きます。諦めろ、とばかりに。<br />
<br />
「結果、<strong>スカサハ&times;ユリア</strong>になりました」<br />
「はい？」<br />
「おめでとう、スカサハ。バーハラ大公になってぼくを支えてね☆」<br />
「ちょ、ちょっと待ってください。俺はですね、傭兵になろうかと」<br />
「君の父上を恨むのだな！」<br />
「そういわれても」<br />
「だめだよスカサハ、ここで謀ったな、セリス！　って叫ばなくちゃ」<br />
「そ、そーゆーものですか」<br />
「うん。じゃ、もう一回。君の父上を恨むのだな！」<br />
「&hellip;&hellip;は、はかったな、セリス&hellip;&hellip;（棒読み）」<br />
<br />
<br />
<br />
―アーサーくん―<br />
<br />
「次は何やろうかなー。あ、アーサー、おまたせー」<br />
「うーす。なんスか」<br />
「あのね、結論から言うと」<br />
「三行で」<br />
「<strong>鉄板<br />
　めっちゃ<br />
　つまんねえ</strong>」<br />
「オーケー、意味不明だ」<br />
「もー！　アーサーのバカバカバカっ！　つまんないじゃないか！　絶望すればいいのに！」<br />
「なんで唐突に不幸を願われるのかさらに意味不明なわけですが」<br />
<br />
　勝手に腹を立てるセリスに対し、アーサーは呆れ顔でした。というより、この手の「遊び」に慣れすぎてスルースキルが磨かれすぎたというものでしょう。<br />
<br />
「あーもー、薔薇の花束用意したからとっとと<strong>アーサー&times;フィー</strong>で納まってよ」<br />
「あ、そのつもりなんでサポートいらないです」<br />
「くううう！　さわやかなスマイルなんぞこぼしてえええっ」<br />
「すいませんねえ、元々なんで！」<br />
「&hellip;&hellip;やっぱオイフェ&times;フィーにしよーかな」<br />
「残念ですがね、俺は嫁さん貰わないとならないんでー」<br />
「そういう君に<strong>アーサー&times;アルテナ様をプロデュースするよ（＾＾）</strong>」<br />
「おい、フィー！　どこだー！」<br />
「オイフェー！　フィーout、アルテナ王女inでー！！」<br />
「させるかぁあああ！！」<br />
<br />
<br />
<br />
―ヨハンさん―<br />
<br />
「ふはははははは！　ぼくのプロデュース力は108まであるぞ！　あ、いらっしゃい」<br />
「何事かな、セリス皇子」<br />
「うん、あのね、<strong>ヨハン&times;ラクチェ</strong>でお願いしマース」<br />
「&hellip;&hellip;そうせよと、命じられるので？」<br />
「命令かな」<br />
「ならばお受けするまで」<br />
「うれしい？」<br />
「とても」<br />
<br />
　同じ年頃のヨハンはとてもとても落ち着きがありました。そして口元に僅かに見せるほほえみなど、なんという紳士。セリスが余計にガキに見えてきます。<br />
<br />
「な、なんかそーゆーリアクションされるとさー」<br />
「大喜びしましょうか？　いや、しているのですが。今すぐにラクチェを迎えに行きたいと思うほどには」<br />
「なんという漢っぷり。そ、そんなに喜ばれると、逆に不幸にし難くなるじゃないか」<br />
「ラクチェと共にならば越えられぬものなどありましょうか」<br />
「う&hellip;&hellip;（ぼくの天敵はコープルだけだと思ってたけど、これは結構&hellip;&hellip;）」<br />
<br />
　ざまぁみろ、という声が各所から聞こえてくるようです。<br />
<br />
「&hellip;&hellip;ヨハン」<br />
「は。なにか」<br />
「べ、別にヨハンの幸せについて考えてカップリングしたんじゃないんだからねっ！」<br />
「おお、なんという<strong>ツンデレ</strong>」<br />
「ばっ、ばかぁっ！///」<br />
<br />
<br />
<br />
―レスターくん―<br />
<br />
「ううっ。グランベルをセリス色に染める自信がなくなっちゃったよ&hellip;&hellip;レスターたすけてー」<br />
「そんなセリス様、なにを仰いますか」<br />
「ぐすっ。レスター、確かめたいことがあるんだけど」<br />
「なんでしょう」<br />
「君の父上は弓騎士のミデェール殿だからさ、」<br />
「&hellip;&hellip;ヴェルダンのジャムカですが」<br />
「ミデェール殿でしょ？」<br />
「ヴェルダンのジャムカです」<br />
「あーあーきこえなーい」<br />
「自分はヴェルダニカです。生粋のグランベルンではありません」<br />
「う&hellip;&hellip;やっぱ怒るレスターすんごい怖いな&hellip;&hellip;」<br />
<br />
　目の据わったレスターを見るのは何年ぶりだろう、とセリスは思いました。こうなってしまうと、お説教モードになったエーディンと同じくらい、大変なのです。<br />
<br />
「レスター！」<br />
「&hellip;&hellip;はい？」<br />
「レスターは、<strong>レスター&times;パティ</strong>っていうことになりました！」<br />
「従兄妹なのですけども」<br />
「たいしたことのない問題じゃないか！　愛はすべてを超える！」<br />
「<strong>空気を読まれるなら、ファバル&times;ラナでセリス&times;ユリアですよ？</strong>　検索ヒット数が倍以上違いますが。見えてます？」<br />
「そ、それはEN的にはちょっとどうも！　っていうか、<strong>ぼく<font color="#ff0000">は</font>常にセリラナ固定</strong>だから！　無理無理無理！　駄目駄目駄目！　この話のコンセプトはぼく以外は不幸になあれだから！！」<br />
「聞こえませんが？」<br />
<br />
<br />
<br />
―アレスくんとセティくん―<br />
<br />
「ううう。ラナと僕の愛だけは永遠なんだ、永遠なんだよおおおお！！　ご存知、ないのですか！！」<br />
「うるせえ馬鹿」<br />
「なんですか、こんなに待たせて」<br />
「二人いっぺんに呼んだのはオチ担当だからだよ、アレスくんにセティくん」<br />
「気持ち悪い呼び方をするな」<br />
「そうですよ、アレスくんって顔ではないではありませんか。<strong>おっさんですよ、この人</strong>」<br />
<br />
　毎度どうも、オチ担当です。<br />
<br />
「ヤックデカルチャー！！　はいはい、ぼくに注目！　お互いが蹴り倒したいほど大好きなのはわかってるけど」<br />
「大嫌いだ。俺を言葉で殺す気か」<br />
「全くです。凍え死にしたらどうしてくれるのです」<br />
「そしたらアグストリアとシレジアはぼくがいただくよ！　&hellip;&hellip;あ、うそうそ、ちょっと思ってただけだから。えーと、まず、アレス。君は<strong>アレス&times;ナンナ</strong>です」<br />
「&hellip;&hellip;あぁ！？」<br />
「で、セティ、お待たせしました、<strong>セティ&times;リーン</strong>です」<br />
「んふっ」<br />
<br />
　凶悪な顔をさらに凶悪にするアレスくん（おっさん）。<br />
　よりにもよって変な声を漏らすセティくん（そろそろおっさん）。<br />
<br />
「アレス&times;ナンナの検索ヒット数はリーフ&times;ナンナを超えてナンナカテゴリでトップ。で、セティ&times;リーンはリーンカテゴリでトップ。動かしようのない完璧なエアーリーディングだよ」<br />
「そーですかそーですか！　ついに王道になり遂せましたかッ！」<br />
「うん、なんか<strong>セティ&times;リーンは流行中みたいだね</strong>。特産品なら黄金航路開拓でギルドで大儲けさ。流行に乗るべきかな？　アレス、というわけでナンナとお幸せにね！　ちなみにナンナのパパはフィン殿だから挨拶しとくよーに。今、ボッコボコにされてコープルにライブされてるとこだから」<br />
「ふふ、どっちが早く親馬鹿になるか競争しようか、アレス王子。あ、なんでしたら、子供同士を婚約させましょうか？　うふふふふふ」<br />
「――お&hellip;&hellip;お前らぁああああああ！！　認めるか、そんなもん、俺が認めるか！」<br />
「ごめんねー、これ戦争なのよー」<br />
「中尉殿は許すがお前は許さん！」<br />
<font size="5">「そうだそうだ！！」</font><br />
<br />
　ドアを蹴破り、片手にフィンを抱えたド変態――もといレヴィンが厳しい顔で闖入したのです。舌打ちする息子、余計話が通じないのが来たと睨むアレス、そして、<br />
<br />
「やっぱり来たね、レヴィン！」<br />
「<font color="#ff0000">レヴィン&times;リーン</font><font color="#ff0000">がない</font>ではないか！　ゆえにこの企画は無効だぁあああああ！！　<strong>レヴィン&times;フュリーでかつシルヴィアがいて、さらにもちろんリーンがいる<font color="#ff00ff">ハーレムED</font>だろうが！！</strong>　というか実行する！」<br />
「わあ、いつも以上に気持ち悪い妄想だね！　刺されろ♪」<br />
「大丈夫！　私は正常だ！　シルヴィアとリーンの舞台を見ながらフュリーとイチャついてシルヴィアに妬かれてリーンが泣いて大変になるけどとにかくどうにかなっちゃう展開がもっとも好ましい！」<br />
「オイ、セティ！　手前の親だろ、どうにかしろよ！！　手前ごと片付けていいなら俺が始末つけるが」<br />
「この変態ならかまいませんが、リーンが悲しむので私はちょっと」<br />
「あ、てめ、呼び捨てにしやがったな」<br />
「妻なので」<br />
「――と、いうわけで現場からお伝えしましたー。やっほう、やっと周囲が絶望に包まれた！　きもちいいー！　さあ、今すぐ行くよ、ラナー☆」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
―女の子たち―<br />
<br />
「ティニー、トローン、用意」<br />
「いつでもオーケーですわっ」<br />
「アルテナ王女、もう一戦行けます？」<br />
「準備は完璧よ」<br />
「ラクチェ、勇者の剣を使ってもいいわよ」<br />
「え！　ほんと！？」<br />
「あとはー、フィー、どうする？」<br />
「まーかせてええええ！！」<br />
「で、中央でリーンが踊って」<br />
「いいのかなあ。いいんだろうけど」<br />
「後詰にナンナが大地の剣で吸う」<br />
「必殺付いてますのでご安心を」<br />
「パティ、金目のもの全部持ってっちゃって」<br />
「ありがとー！」<br />
「&hellip;&hellip;さ、ゲームを始めましょ&hellip;&hellip;」<br />
<br />
　――暇つぶしのね&hellip;&hellip;？<br />
<br />
<br />
<br />
<br /><br /><a href="https://enkura.blog.shinobi.jp/%E3%83%8D%E3%82%BF/%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%81%A8%E9%A6%AC%E9%B9%BF%E3%81%A9%E3%82%82%EF%BC%89" target="_blank">蛇足</a>]]>
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    <category>ネタ</category>
    <link>https://enkura.blog.shinobi.jp/%E3%83%8D%E3%82%BF/%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%81%A8%E9%A6%AC%E9%B9%BF%E3%81%A9%E3%82%82%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Tue, 18 Nov 2008 14:49:36 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>少女のほとり　　（ラクチェ）</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
　エーディンがありったけの愛情を注いでくれていたお陰で――いや、「せい」で、ラクチェは自分が苦しんでいることを知り狼狽した。彼女には感謝しかないが、あの優しげな広い愛情が身に注いでいたことが幸福なことだったと知れば知るほど、ラクチェを追い詰めた。<br />
　実の母からの愛情を注がれたラナはといえば、セリスからの愛を毎日踏み散らしていた。気付かない振りをしているのだか、本当に気付いていないのか、ラクチェにはわからない。ラナが恋をしているという状況を想像できないからだ。<br />
　愛情なんて知らない子供であればよかったと、なんとも贅沢な嘆きを上げる。そうすれば、愛情と愛とを区別できない子供でいられた。そうあれば、こんな苦しみなんてなかった、と。<br />
　――ラクチェは胸に友情とも愛情とも違う感情を抱いてしまったおのれに、恐怖している。自分も女だったのかという絶望すら感じる。性差はあるのだとあれほどシャナンが口煩かったのが、今になって実感として襲う。並みの男以上に剣を振るうことのできる自分に慢心していたと思うことはないが、それでも兄と同等ぐらいにはやれていると誇っていたのだ。しかし、究極的には兄には決して敵わないことを、ラクチェは知っている。<br />
　頭を振る。懸命に振った。<br />
<br />
（スカ、助けてよ）<br />
<br />
　兄は居ない。彼は常に一番前に置かれる人である。<br />
　餌として「ちょうどいい」からだ。<br />
<br />
（あたし、あたし、どうしちゃったんだろう。これから出るのよ、軍場に。なのにどうして、今、）<br />
<br />
　仕事は斬りまくること。だけど真っ赤に染まってはいけない。<br />
　ラクチェの仕事は究極的に美しくあること。強いことは勿論、華麗に舞うようにして斬りまくること。ラクチェは「諦めさせる係」。<br />
　敵に死をくれてやるのは、兄の仕事。命乞いも懺悔も走馬灯もない。死神と噂されるのは常にラクチェだけで、本当は兄に捧げられるべき二つ名なのだ。でも誰も生きていないのだから噂なんて沸かない。兄は兵たちにいつだって軽んじられている――妹と違って使えないと。何も知らないくせに。<br />
<br />
　――諸君、馬鹿を言ってはいけない。<br />
<br />
　彼はそう言った。朗々と演説した。滔々と説教した。<br />
　開戦前の演説は決まってセリスがするべきことだったが、セリスはむしろ熱心に彼の言葉を聴いた。そして狂喜乱舞した。多分、喋らなくてよくなったからだ。<br />
　演説は巧いもので、聞きほれるような声をしていたんだと、このとき初めて思った。高等教育を受けている証拠ですなとオイフェが目を細めていた。<br />
<br />
（スカぁ&hellip;&hellip;）<br />
<br />
　兄は居ない。人斬りに出ている。<br />
　退路を断ち、一人も生かすなと命じている。冷酷な命令を、笑顔で。<br />
<br />
（スカが褒められた）<br />
<br />
　熱い。頬が熱い。頭が熱い。<br />
　ラクチェはおのれを抱きしめる。兄が居ないからおのれの身を抱く。もう一人の兄とも呼ぶデルムッドが居たら彼に抱きついただろうし、もっと頼りになるレスターならば両手を掴んでぶんぶん振り回すだろう。セリスならば背中を叩きまくり、シャナンになら斬りかかる。オイフェのヒゲを触って叱られる覚悟すらできる。<br />
　嬉しいのだ。無性に嬉しいのだ。<br />
<br />
（そうだよ、スカは凄いんだから。怖いんだから。優しいんだからね、物凄く。器量がとんでもなく大きくって、セリス様なんかスカの器の中でぷかぷか浮いてるんだからね！　&hellip;&hellip;嘘だけどさ。でも、ほんとなんだから、スカが格好いいのはほんとなんだから。男にばっか慕われる男くさい野郎なんだからね！　スカのお嫁さんはあたしが決めるんだからね！）<br />
<br />
　彼は言った。<br />
　勇者というのはまさに兄のような人物であると。そして数ある勇者のうちで英雄と呼ぶことの出来る男はさらに数少ないのだとも。<br />
<br />
「彼が己の功を誇った事があるだろうか。声高に名声を呉れと叫んだ事があるだろうか。彼のような勇者を我々が英雄と称えず何としようか！」<br />
<br />
　胸の高鳴りとはこういうものか。ラクチェは身を竦める。<br />
<br />
「我らも英雄に続こうではないか、勇者諸君！　彼の道に続け！」<br />
<br />
　怒号が身体を打つ。男どもの熱狂がラクチェの身をなぶる。――素晴らしい快感だ。<br />
　そろそろと己を抱く手を下ろす。壇上に居るわけでもない彼の姿は、人垣によって影すら見えない。今、熱狂の渦の目になっている彼は、男達からの喝采を浴びている。それらに応える彼の声は聞こえなかった。<br />
<br />
（馬鹿）<br />
<br />
　不満げな顔になっている事をラクチェは知らない。<br />
<br />
（馬鹿、馬鹿馬鹿っ）<br />
<br />
　涙を流すのではないかと悟られるくらいにひとみを潤ませていることも判らない。<br />
<br />
（女になるのは戦争終わってからって決めたじゃない！　全部終わってからだって！　あたしの馬鹿！）<br />
<br />
　それまでは少女のままで、もしくは性差など忘れた愚かな娘として生きると決めていた。こんな時代だ、誰だって何かしらを我慢し、選択して捨てている。それがラクチェの場合、女であっただけだ。同情されたくもないし、非難もされたくはない。<br />
　男どもが一方に向かって流れ始めた。隊列を組めという大声があちこちから聞こえる。ラクチェも行かなくてはならない。が、動けなかった。彼の姿が見えたからである。<br />
　彼はラクチェに気付き、いつもと同じ温和な笑顔でいた。小さく手を上げ、彼は呼びたてられた方へと足を向ける。大きな背が、ラクチェに何も語らず去ろうとしている。しかしラクチェの芦は動かない。思考はまるでまとまりがつかない。<br />
　だから、ラクチェは叫んだ――叫んでしまったのだ。<br />
<br />
「もっと誉めなさいよ、馬鹿！」<br />
<br />
　彼は振り返り、やはり笑顔で応えた。僅かに動いた口が、「次にね」と言ったような気がして、ラクチェの身体はまた震える。<br />
　ラクチェは恋をしていた。<br /><a href="https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%81%AE%E3%81%BB%E3%81%A8%E3%82%8A%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%81%E3%82%A7%EF%BC%89" target="_blank">蛇足</a>]]>
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    <category>短編</category>
    <link>https://enkura.blog.shinobi.jp/%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%81%AE%E3%81%BB%E3%81%A8%E3%82%8A%E3%80%80%E3%80%80%EF%BC%88%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%81%E3%82%A7%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Sat, 08 Nov 2008 01:52:00 GMT</pubDate>
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